オンライン実験をはじめたキッカケ

この記事はOnline Psychological Experiment Advant Calander(https://adventar.org/calendars/6005)の2日目です。

2日目といいながら,1日目はないです。なぜなら,2日目の今日(2020年12月2日)に急にやろうと思ったからです。このカレンダーでは主に論文などでは書けない内容を書いてみたいと思います。

初回の今回はなぜオンライン実験をはじめたのかについてを書いてみます。オンライン実験という存在を知ったのは,2014〜2015年頃に名大の川口研でポスドクをやっていた時です。UCLAに留学して帰国された池田賢司さん(東海学院大学)から,UCLAでは記憶実験をオンラインでやっていて,実際にご自分もやられたという話をお聞きしました。当時は,「調査はともかくオンラインで実験なんてできるのか」と半信半疑でした。しかし,自分で経験して試してみないとわからないので,自分たちでもやってみようと思い,池田賢司さんに協力してもらい,Mturkで記憶のオンライン実験を初めてやってみました。プログラムはPHPで書かれたもので,ほぼお任せだったと記憶しています。結果はあまりうまくいかなかったのですが,募集から終了までの速さに驚きました。これまで実験室実験しかしてこなかったので,オンラインでも実験ができるということが不思議に感じましたね。

その後,当時の川口研メンバーの何名かで自分たちで虚記憶のオンライン実験をやってみることになりました。虚記憶を選んだのは,手続きが比較的簡単だからだったのもあったと思います。オンライン実験を実施するためにはオンライン実験を実施できるソフトウェアやサーバーが必要です。さすがにPHPでのプログラミングとサーバー構築はできなかったので,ソフトウェアとサーバーがセットで利用できるInquisit 4 webを僕が購入しました(その後,研究室単位で導入してもらっています)。プログラムとサーバーに加えて,オンライン実験では参加者募集プールとしてクラウドソーシングが必要になりますが,当時,Mturkはアメリカからしか実施できなかったので,日本からでも実施できるCloud flowerという海外のクラウドソーシングサービスを利用して,自分達の手で初めてオンライン実験を実施しました。はじめてのオンライン実験で,まったくノウハウがなかったため,トラブル続きで大変でした。例えば,実験終了後の確認コードが固定(1つ)だったせいで,実験に参加していないクラウドワーカーさんにコードが共有されたりなどです。そのような事情などもあり,結局,ここで取ったデータはお蔵入りになりました(たしか)。

ここまで書いてみると,なぜオンライン実験をそれからもやっていたのかは不思議ですが,その後,海外ではなく日本のクラウドソーシングサービスを使ってオンライン実験をしてみようと計画しました。具体的に,どの実験を誰とやったかは忘れてしまいましたが(自伝的記憶の系列位置効果ですね),名大にいた時だったと思います。日本語で説明できるから大丈夫かと思いきや,参加者のクラウドワーカーさんにはオンライン実験はまったくの未知の経験だったようで,こちらでも結局,色々とトラブルが起きました。今でこそ,クラウドソーシングでオンライン実験をすれば,多くのクラウドワーカーさんが参加してくださり,質問もなく確認コードが送信されてくるわけですが,最初からこのような形ではありませんでしたね。僕も含め,様々な研究者がオンライン実験・調査を実施する中で,徐々にクラウドソーシングにオンライン実験・調査が定着していったのでしょう。

そんなこんなで,約6年ほどの間,名大,関学,山大と所属が変わる中でも細々とオンライン実験を続けてきて,いまに至ります。

小林 正法
小林 正法
Principal Investigator

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